9月に入って、福岡県では塾を対象とした高校の学校説明会が、今年も各学校で開催されます。
中学3年生にとっては、3年間毎日、多くの時間を過ごすことになる高校選びは、とても重要です。塾を対象とした説明会では、生徒や保護者を対象とする説明会とはまた違った情報が得られます。高校はその学校によって校風など、本当に様々です。
その地域での昔からの噂と違い、実際に足を踏み入れることで見えてくるものも沢山あります。
ですから、私はなるべくこういう場に参加するようにしています。
また、保護者の方々と教育者とでは、校舎内を見学するにも見るところが違っています。教室内の掲示物一つ取っても、その学校の校風が読みたれたりするんですよね。
そんな私目線で、参加できた高校はレポートとして上げていきますので、福岡の学生さん、親御さん、学校選びの参考にしてくださいね。
さて、今年の1校目は、福岡県立福岡農業高等学校です。
こちらは昨年、初めて参加した学校です。専門高校になるので、一般的な普通高校とは敷地内の様子がかなり違います。
昨年の学校説明会のレポートも参考にしてください。
お引越し前のアメブロの記事です。
https://ameblo.jp/kotosa-taro/entry-12623992226.html
今年は緊急事態宣言中ということもあり、学生さんたちの実習の様子は拝見できませんでした。
そのかわり、帰りに車で敷地内をぐるりと一周しました。こんなに広いところとは知らず、ビックリ!
西日本一の面積、校地42ha、ドーム球場6個分!
水田だけでもかなりの広さがありました。
目次
この学校の特記すべき特徴
進学・就職率7年連続100%
昨年に引き続き、コロナ下の厳しい環境にも関わらず、今年も蓋を開ければ充分な求人確保ができています。これも、卒業生たちが就職先で頑張ってくれていることで、企業に学校の評判がいいからだそうです。
また、昔と比べて進学する子も多く、就職と進学の比率は4:6。半分以上が進学を選択。国立大学農学部に進学する子も。
主な進学、就職先は学科紹介のパンフレット写真をご覧ください。当日参加者に配られた資料には、令和元年と令和2年度の(おそらく全ての)進路実績が掲載されていました。
宮崎大学は、農業高校から大健闘ですね!令和元年には久留米大学、長崎外国語大学なども。
就職先に太宰府天満宮が入っているのが、太宰府の高校らしくて面白いです。公務員を目指して専門学校に進学する子、女子だと、看護師、栄養士、調理師、保育士、などを目指しての進学も見られます。その他、美容・ファッション系、ブライダル系、航空専門学校への進学もいます。
卒業後の進路は、実に様々です。
20を超える地域連携事業展開
学内だけに留まらず、地域に貢献する形での学外活動が大変盛んです。学科紹介のところでいくつか事例をご紹介します。
専攻科が令和4年から変わり、大学編入学にも有利に
この学校のすぐ隣に専攻科があります。日本で唯一、短期大学設置基準に準じたカリキュラムを実施する農業専攻科。農業の短大と思えばいいです。
令和4年から、大学設置基準に合わせて、単位認定が大幅増!大学3年に編入も可能になります。
しかも、授業料は高校と同じ扱いになるので、公立高校と同じ授業料で月額9900円。就学支援金も適応になりますから、実質無料にすることも可能。
ということは・・、ここで2年間学んで、大学に3年次に編入をすれば、大学を卒業するまでにかかる費用は、嘘みたいに安くなりますよね。
農学系で大学進学したいという思いはあるけれど、経済的な壁がある子にとっては、大きなチャンス!
このように、世の中には色々な進学方法、学生への経済支援が存在しています。経済的な理由で進学に制限がかかってしまう状況でも、諦めずに調べていたら何かしらの策が出てきたりするもんです。賢く上手に色々なものを活用しましょう♪
九州の高校ではここだけ、グローバルGAP認証獲得
グローバルGAPとは世界基準の農業認証。栽培実習において、トマトで獲得。糖度14度のトマトなんだそうです。ちなみに、オリンピックの選手村に搬入される食材は、このグローバルGAPを認証したものしか持ち込まれないそうです。
また、H30までSPH指定校で、その時の経験を活かして、現在は独自に取り組みを継続。
在校生、卒業生の真面目さ
通学中の生徒や授業風景を見ると正直驚きますが、皆真面目です。40代以上の世代は、農業高校というと、いわゆるヤンキー・・がいるのを想像する方もいると思います。昔はそうでしたから(笑)
この学校にはそういった子はいません。教室での授業風景は、進学校とも変わりません。私の感覚では、普通高校のほうが、教室で寝てる子やだるそうにしている子が多いと感じます。
公立高校なので、先生も色々な公立高校を回られている先生が多いですが、進学校からこちらに赴任して来た先生自身も、生徒たちの真面目さに驚かれたそうです。
中には勉強がとてもできる子もいて、つい「進学校になんで行かなかったの?」と思ってしまうような子もいるそうで、そういう子は志が高く、大学の農学部への進学を目指して頑張っていたりするそうです。
毎年求人を充分に確保できているのも、この学校の卒業生が就職先でも熱心に働いているからこそ。学校での活動の説明を聞いて、ここの学生は、地域連携活動などを通して、皆それぞれに社会人として自立を目指す意識が高くなるんだろうなと感じました。
学科紹介
農業高校ですが、農業に関する3学科(都市園芸科、環境活用科、食品科学科)以外に、生活に関する、生活デザイン科もあります。
以下では、説明会の場で直接聞いた話しをできるだけ加えてご紹介します。
都市園芸科
この科で栽培しているトマトが、グローバルGAPを獲得。専門的な勉強をしているようです。栽培した草花の販売や、太宰府市内小学校給食への食材の提供などもしています。
環境活用科
育てた黒毛和牛が昨年A5ランクを取得するという、この高校初の快挙!
小学生と田植え→米収穫後のイネを牛の飼料に→牛の糞を堆肥化→畑に戻すというような一連のサイクルを行う。
校外実習では、実際に個人宅の庭の管理を行う。
国家資格の造園技能士では、外部講師による400時間の学習により資格取得を応援。
食品科学科
学科の特色を生かして、地域の食育教育の推進を目的としてNPO法人「Eating Love Circle」を設立。「子ども食堂」では、ただ単に子どもたちに食事を提供するのではなく、子どもと一緒に調理をすることで、子どもたちが家で自分でも作れるようにするなど、一歩進んだ食育活動を実施。
高校生がNPO法人活動をしているというのは本当に驚きました。
西鉄と協力しての梅サイダー製作(お土産にいただいたんですが、さっぱりで美味しかったです!)。
カルビーと共同開発でポテトチップス発売。実際に商品を販売するので、企業側も学生相手とはいえ、利益を生むために真剣。企業とのオンラインによる企画会議では、先生方が驚くほど真剣な会議が、高校生と企業間で行なわれているそうです。
パンの製造では、近隣の保育園に納品。生地に野菜を練り込むなどの工夫も。
「前日に生地を作っておくと添加物を入れないといけなくなるから」という理由で、生徒たち自らが朝とても早い時間に通学して来て、パン製作に励むそうで、先生の方がその行動と意識の高さに驚かれるそうです。
生活デザイン科
「調理」に関することは、食品科学科ではなく、こちらの科のフードデザインコースになるので注意。
高校創立140周年の際には卒業生のウエディングをプロデュースし、ウエディングケーキなども製作。
ファッションデザインコースでは、自分たちが製作したドレスを着てファッションショーをする際には、プロ講師を呼んでのランウェイレッスン指導も行う。
女子が気になる制服とトイレ
私が思うこの学校の良さ、この学校に合いそうな子
この学校は専門高校なので、普通高校と違って、様々な特殊な学びの活動があり、普通高校を卒業した私としては、この学校の活動紹介がとても興味深くて面白かったです。公立ですが、外部講師をよく呼ばれているようでした。
また、先生方が「生徒たちの行動にこっちのほうが驚かされる」というような表現を頻繁にされていたのが印象的でした。これは私もたくさん体験しているのでわかる気がします。中高生くらいの子は、自分のことが自分ごとになって、一旦主体性が芽生えてくると、大人があっと驚くような成長した姿勢や行動、結果を見せてくれるんですよね。
こちらの学校では、学内での活動だけではなく、学外での活動が盛んです。特に地域に貢献するような形での活動や交流を通して、普通高校では得られない貴重な体験をたくさんしているんだと思います。
高校生ですでに、地域交流、特に自分よりも小さな、保育園児や小学生たちに支援をするような形での関わりが、社会貢献感や主体性を強めるのではないかなとも思います。だから、普通高校にありがちな、気力の弱ったボーッとした子が見受けられないのかなと。
通常中学生は、高校は普通高校を考えることが多いですよね。将来は自分の目標のために大学に進学!ということを決め込んでいたり、机に座っての勉強が好き、または苦ではない、という子は、普通高校でいいかもしれません。
中には勉強が苦痛で仕方がないとか、机に座っての勉強が大嫌い!!というような子もいると思います。そういう子が、なんとな~く、皆が行くから自分もしょうがない、親が行けっていうから・・、で普通高校に進学した場合、毎日毎日苦痛な勉強を強いられて、5教科の勉強だけして、自分の将来もよく考えられないままに高3。このように、経験体験も少なく、気力もなく、自分の将来をよく考えられないまま高3を迎えてしまう子もいます。
普通高校では、専門高校ほどの資格や技術力は身につけられないので、勉強を避けたまま高校生活をボーッと過ごしていると、進学するにも弱い、かといって就職するにも弱い、いうことにもなります。普通高校にはこういう子が結構いるのが現状です。トップの進学校の学生と言えども、下位層の子たちはそんな状況です。
実際にたくさん見てきました。
「勉強が嫌いとか、苦手という子も、自分の将来を真剣に考えるようになると変わってきます。この学校で社会に役立つ活動を通して、自分の将来を考えるいいきっかけになっているようです」と、ここの先生が言われていました。
もともと食や農業系、生活に関心の高い子はもちろん合うと思います。
さらには、勉強が大嫌い、じっとしているが難しい、毎日同じことの繰り返しは難しい、体を動かしてるほうがいい、何か活動的なことをしていたほうがいい、というようなタイプの子は、この学校のような、いろんな体験や経験を通して学んだりできる環境の方が、伸び伸びできていいかもしれません。
不登校気味とか身体が虚弱とか、そういった子の場合は、多くの時間自然の中に身を置いたり活動的な環境は、心身に良いです。健康的な生活を送って身体が作られると気力も湧いて来ます。
また、中途半端にダラダラと思春期を過ごして、大学卒業(卒業すればまだいいほう)してもニート、またはアルバイト生活という子が増えている現在です。
高校で何かしらの技術や実践力を身につけた上で、就職あるいはその先の進学をするほうが、確実に自立ができることにもなります。
そういった社会背景もあって、現在では高校卒業後の進学先においても、資格をたくさん取れたり、技術力を身につけられるような専門性のある、専門学校、短大、大学が人気があります。
最後の質疑応答では、「この学校を選ぶにあたって、こういうのが苦手だと難しい、というようなところはありますか?」という質問に対して、
「一番大事なのはやる気です。苦手はどんなものがあっても全然構いません。苦手は周りがサポートしてくれますから。中学時代に勉強も全然ダメだったという子でも、ここに来て伸びてる子もたくさんいます。」とのことでした。先生のこの発言が印象的でした。やはり普通高校とは違ってますよね。
サポートしてくれる相手というのは、この学校の場合だと、クラスの仲間、先生、地域の人たち、コラボする企業の大人たち、いろんな人たちが想像できますよね。
オープンスクール
9月25日に高校体験入学が予定されています。今年は中学校の地域で分けて行われます。申し込みは、中学校を通してです。
緊急事態宣言等、今後予定変更や中止の可能性もあります。
体験入学が難しい場合は・・
月に2回の農産物販売会や、卵販売(常時)で、車で敷地内に入ってぐるりと一周もできます。こういうのでちょっと立ち寄って、外の雰囲気を見るのもいいかもしれません。
まとめ
忘れてはいけませんが、日本は義務教育は中学までです。高校から先は、行きたい子が行くところです。ですから、みんなが行くから自分も行かないといけないとか、どこか適当に・・というような意識は排除して、目的意識を持つ必要があります。
高校は、子ども本人が3年間ほぼ毎日通うところです。
学校を選ぶ際には、親の欲、世間の評判、ブランド、少しでも偏差値の高いところ、などで選ぶのではなく、子ども本人の特性、性格、適正に合わせて、本人起点で、「自分に合う学校」を選ぶのがとても大切です。
将来社会人として自立することが大前提、そのための高校ですから、何を目的に、その学校で何を学ぶのか、明確にする必要があります。
私は、若者たちには、自分に合うところで、仲間達と楽しく学びながら、思春期の若さを謳歌しながら、自分の才能を大いに開花させて、自分にぴったりの将来を切り開いて欲しいな〜と、いつも思っています。
そんな思いがあって、少しでも多くの学生たちに、自分に合う学校探しの助けになればと、学校説明会にいった際にはレポートを綴っています。
私を含めて、親御さん方が学生時代だった頃の感覚での判断は、正直古すぎて、これから先の若者の将来には参考になりません。
実際に私自身、違うとは知っていながらも、ビーバップハイスクール的なイメージを少しばかり持って、数年前に初めていろんな専門高校の敷地内に入って、当時と現在での違いに頭カチ割られた経験をしています(笑)
親御さん方にも、自分たちの時代の先入観で判断せずに、「今はどうなんだろう?」という姿勢で、学校を見てもらうといいのではないかなと思います。そのほうが、お子さんにとって本当に必要なものに目を向けられると思います。
今回の、福岡農業高校学校見学レポート、皆さんの学校選びの、何か参考になれば嬉しいです!